描くというのは、ペンの先を
紙に置いて、インクを染み込ませ、
それを滑らせていく行為だ。
線をひくと、
白い紙に、世界が生まれはじめる。
ものすごく力強い引力が働きはじめるようでもある。
それに引っ張られる感覚が楽しい感じだ。
白い紙は、まっしろなので、
澄み切った空気が流れているようだ。
白い紙を目の前に置くと、
神社の大きなお堂の前に
立ったような気分になる。
だから、描こうと思って椅子に座っても、なにも描かずにじっとしていることも多い。
空白というのは、
ぜいたくな感じだ。
しずけさも、
ぜいたくな感じだ。
賑やかでカオスのような情報空間の現代で、
生きているということの感覚を
求めているからかもしれない。
そして、
美しさを求めているのかもしれない。
わたしは、描くことで、
削ぎ落としている。