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tabeiakiko 2020-05-28
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AkiBlog

おいちゃんの傘

夕方から夜にさしかかる頃、買い物に出かけようと外に出た。

昼より湿気が増したようで、蒸し暑かった。

歩いてしばらくすると、雨が降り始めた。

小雨程度なら傘がなくても、と思ったが、2秒おきくらいに強さが増していき、え、と思う間もなく、いよいよ、バケツをひっくり返したような土砂降りになった。(ひゃぁー!)

とっさに、近くの民家の玄関下に逃げこんだ。

ふぅと息をつこうとした瞬間、雨が吹き込んでくる。

やばいやばい。

斜めに強烈に降る雨から、垂直に降る少し弱まった雨を見て、

ふうと息をつく。

この雨、あとどれくらい続くかなぁ。

玄関下にいつまでもいるわけにもいかないなぁと、少し中に目を向けてみる。

何分か経ったころ、玄関が明るくなった。

あ、家の人に見つかっちゃった。

そしたら、中から、傘を持ったおじさん(初老の方)が、

「これ使ってください。

突然の雨だからねぇ。」と

傘を渡してくれた。

私はびっくりした。

「え!!あ、、ありがとうございます!

あぁ、、ありがとうございます!」

おいちゃんの後ろには、そっと様子を見るおばさんもちらっと見えた。

私は傘を受け取り、

早歩きで家に向かった。

雨の中、大きな水たまりをいくつも避けながら、

“あったかい…”

と心の中でつぶやいていた。

映画「男はつらいよ」の寅さんが隣で黙ってうんうん、とうなずいているようだった。

家に着くと、涙が出た。

おいちゃん、私に何も聞かず、

私がどういう人か分からないのに、

傘を持って玄関を開けたんだ。

最近涙もろくなったのであるが、

突然の大雨とともに、

なんだか、こころが洗われた気がした。

おいちゃんの顔と、おばさんの姿が、何度も浮かんでくる。

…

こういう感覚が、

ほんとうに、響いてたまらない。

今日はお礼を言いにおいちゃんとおばさんちに行く。

傘をお返しするのが楽しみだ。

いい時間が、あなたに、あなたの大切な人に、ありますように。

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