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tabeiakiko 2020-08-23
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AkiBlog

輪郭

夜、スーパーに行こうとして、

大きな国道を横断歩道で横切った。

大きなトラックやバイクが猛スピードで走る国道から10メートルも離れると、何かシールドを抜けたかのように、とたんに雰囲気が変わる。

灯りは少なくなり、看板もぐっと減った。音もしずかになった。

なんだか、“圧”が変わったみたいだ。

ふぅ、と息をついた。

私は4日前に引っ越しをして、新しい県、新しい土地にやってきたばかり。

明日が燃えるゴミの日ということを知り、指定のゴミ袋を買いに、スーパーに向かった。

暗い道は少しこわかったけれど、

その暗さに、どこかほっとするような、安心感を感じていた。

ここのところ、携帯の画面を見てばかりいた。調べ物のために検索したりYouTubeを見たり。

いつも賑やかで、とにもかくにも、情報だらけだ。

今、私の目の前に広がるのは、

田んぼと、月、道路。

そして、

今、という時間。

何ヶ月か前の情報ではなく、

未来のことでもなく、

誰かの配信ではなく、

わたしの、今。

このことが、

私のからだの中に、みずみずしい感覚を与えてくれた。

ときどき吹く風が、ここちよく、

鈴虫の声が、ひっきりなしに聴こえてくる。

そして、月が見える。

月は、ちょうど満月だ。

満月の光だけが、暗闇の中でおぼろげに灯っている。

そしてその灯りが、

空と森の境界線をかすかに照らしていた。

その風景に、目も、心も、奪われた。

しばらく見ていたら、

なんだか、風景に、自分自身がスーッと溶け込んでいくような、自然の一部になっていくように感じた。

空間の中で、私はにんげんとして立っているんだと思った。

風が肌にそっと当たって、私の輪郭は存在感を取り戻す。

月は何も言わずに、ただただそこにあった。

ふと、私は帰らなくちゃと、足を動かした。

この風景は、毛穴が吸収したみたいで、細胞の中に入っていくように思えた。

「忘れられない風景」というフォルダに保管だ。

もの言わぬ、目の前の風景と空間が、

なにかを開かせてくれた。

国道の激しいスピードは、また別の感覚をよみがえらせて、私は足早に歩き出した。

色が生まれた時間 白い紙の奥にある社
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